ストレスケアと音楽療法。音のチカラでメンタルウェルビーイングを向上させ、ストレスケアにつなげるために音楽療法を推奨しています。ところで「ストレスケア」とはなにか。企業が取り組むメリットは?。この記事ではストレスケアの効果はどう測定するのかなどをご案内させてください。

ストレスケアとは

ストレスケアとは、ストレスを軽減し、心身の健康を保つための活動や方法です。すべての生物は、日常生活や仕事の中でストレッサー(刺激)によって様々なストレス状態になります。そのストレス状態を管理し、緩和することが重要なのです。

なぜなら過剰/過小ストレスによって、心身を損なうからです。何か異変を感じて病院に行くと「ストレスだね」と言われるのがそれです。ちなみにお医者さんはストレッサーを知る余地がないため、真因はわからないのです。日常生活において、ストレスを管理するのがストレスケア。企業コンテクストでいうと、ストレスマネジメントです。ここを抑えないと離職率があがったり、休職が増えたり、復職からの離職が跳ね上がります。いまは採用がむずかしい時代ですので、今いる従業員に定着してもらうことに目をむけたほうが現実的だろうと考えています。

さて、ストレスケアには様々な方法がありますが、以下のようなことをぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

  1. リラックス法や瞑想:深呼吸やプログレッシブ・マッスル・リラクセーションなどのリラックス法や瞑想をおこなうことで、心身の緊張を解きほぐし、ストレスを軽減します。
  2. 趣味やレクリエーション:趣味や興味を持つ活動を楽しむことで、ストレスから解放され、気分をリフレッシュすることができます。これは自分にとって快とする状態に身をおくことになるので、なにが快適/不快かは、人それぞれ異なっています。ちなみにこの情動を司っているのは大脳基底核です。
  3. 運動や体をうごかす:運動やウォーキングなどの有酸素運動を行うことで、ストレスホルモンの分泌を抑制し、リラックス効果を得ることができるとされています。ストレスホルモンのコルチゾールやアドレナリンを同時に抑制するには、有酸素運動がよいとされています。
  4. 健康的なライフスタイル:バランスの取れた食事、十分な睡眠、定期的な休息など、健康的なライフスタイルを維持することもストレスケアにつながります。とくに睡眠はストレス状態を確認するバロメーターになります。
  5. ソーシャルサポート:友人や家族、同僚などのソーシャルネットワークを活用して、感情を共有し、助け合うことで、ストレス状態への対処がしやすくなります。話をきいてもらうことで脳の整理ができたり、スッキリした気分になるはこのためです。人間は言語でコミュニケーションをとる生き物なので。(他にもいるそうですが)
  6. マインドフルネス:現在の瞬間に意識を集中するマインドフルネスの実践は、ストレスの軽減や心の安定に効果的だとされています。脳のデフォルト・モード・ネットワークを活性化させるそうです。ちなみに座禅・瞑想とマインドフルネスは異なるそうです。

これらの方法を継続的に実践することで、ストレスの管理や軽減が可能となり、心身の健康を維持することができます。音楽療法は、マインドフルネスによってもたらされるデフォルトモードネットワークへの突入を促進できます。

「好きな音楽を聞けばいいんじゃないの?」と言われることがあるのですが、BGMをきくのと音楽療法では、音に対する集中や脳への刺激度合いが異なるのです。そのため福祉施設や病棟ではBGMではなく、音楽療法を取り入れるところが増えてきているのです。

企業が従業員に対してストレスケアを提供することのメリットは?

ストレスケアは個人に任せればいいのでは。とも聞くことがあります。仕事をしていると、1日8時間、職務内容によってはそれ以上の時間を費やしているケースもあります。健康経営という概念があるように従業員の健康ならびにメンタルケアをおこなうのは、費やす時間の持続性を高めるためにも必要ではないでしょうか。その結果、メンタルウェルビーイングの向上につながると思いませんか。

企業がストレスケアに向き合ったほうがいい6つの理由

6つ、と微妙に中途半端ですが、企業が従業員に対してストレスケアを提供することには、こういうメリットがあります。

  1. 生産性の向上: ストレスを軽減することで、従業員の集中力やクリエイティビティが向上し、業務効率や生産性が向上します。メタ認知の向上も期待できます。
  2. リテンションの向上: ストレスケアを提供することで、「働きやすい環境」「働きがいのある組織」との認識が高まれば、従業員の満足度やロイヤリティがが高まり、離職率が低下します。エンゲージメントをあげたいと考えるなら、ぜひ取り組んでほしい人事施策です。
  3. メンタルヘルスの改善: ストレスケアを通じて、従業員のメンタルヘルスが改善されることが、もっとも重要です。ストレスが高い組織はストレス関連の疾患や精神的な問題を抱えていることがほとんどです。それを口外しないだけで、また「どういう施策を講じればいいのか」がわからないため課題が放置されてしまうことも多いのです。ストレスケアに取り組むことでメンタルヘルスによる事業リスクが低減します。
  4. 健康経済的メリット: ストレスケアを提供することで、従業員の健康状態が改善され、医療費や労働力の喪失など、健康関連の経済的負担が軽減されます。
  5. ブランド価値の向上: 従業員に対するストレスケアの提供は、企業の社会的責任の一環として認識され、企業のイメージやブランド価値の向上につながります。
  6. イノベーションと創造性の促進: ストレスケアを提供することで、従業員はリラックスし、自己表現やアイデアの共有が促進され、イノベーションと創造性が活性化されます。緊張状態が8-10時間、毎日つづくと想像してみてください。

ストレスケアとはいってみれば、心身のケアをおこなうことです。これらのメリットを通じて、企業は従業員の幸福感や働きやすさを向上させ、競争力を高めることができます。なぜ?って心=脳です。脳を適切な状態におく環境をつくることが生産性や創造性を活性させ、企業の持続性を高めるのです。

SDGsやウェルビーイングと関係あるの?

ストレスケアはSDGs(持続可能な開発目標)やウェルビーイングに密接に関連しています。

  1. SDGs: ストレスケアは、特に「3. 良い健康と福祉をすべての年齢層のために確保し、健康的な生活を促進する」という目標に関連しています。ストレスケアを提供することで、従業員や社会の健康と福祉を改善し、持続可能な開発を推進することができます。(当社サイトにもSDGs宣言を掲載しています)
  2. ウェルビーイング: ストレスケアは個々のウェルビーイングにも大きく影響します。心身の健康と幸福は、個人の生活の質を向上させ、より充実した生活を送るための基盤となります。従業員がストレスに対処し、心身のバランスを取ることができれば、仕事や生活の質が向上し、組織全体のパフォーマンスが向上することが期待されます。

ストレスケアは社会的な健康とウェルビーイングを促進し、持続可能な開発の目標を達成するための重要な手段として位置付けられています。

本題、音楽療法ってなに?

前述のようにストレスケアに企業が取り組む意義を書きました。これらはKPIとして数値化可能な施策ですので、ご関心あるかたはぜひ、お話しませんか。

長くなりました。やっと「音楽療法」にたどり着きました。音楽療法とは音楽を使用して身体的、心理的、社会的な健康を促進し、治療やリハビリテーションを支援するための専門的なアプローチです。音楽療法士が患者やクライアントと協力して、音楽の力を利用して特定の目標を達成することを目指します。

音楽療法は個々のニーズや状況に応じてカスタマイズされ、様々な方法や技法が用いられます。例えば、音楽演奏や歌唱を通じて感情の表現を促し、ストレスや不安を軽減します。また、リズムやメロディを活用して身体的なリハビリテーションを支援したり、コミュニケーションスキルの向上やチームビルディングの促進に役立つこともあります。論文サーチで検索していただくと、コルチゾールの軽減についての論文がおおく掲載されています。

音楽療法をうけているとき、(療法にかぎりませんが)脳の海馬が刺激されます。海馬は記憶の貯蔵庫です。そのため音楽療法は、精神保健施設、病院、リハビリセンター、介護施設などの様々な場所で提供されています。様々な年齢層や状況の人々に対して幅広く応用され、身体的、心理的、社会的な健康とウェルビーイングの向上に貢献しています。音が記憶を呼び起こすからです。

当社はこの「音楽療法」を企業のストレスケアとして推奨したいと考えています。

音楽で人がリラックスや癒やされるのはなぜだろう

音楽が人々をリラックスさせたり癒やしたりする理由は複数あります。

  1. 生理的効果: 音楽は心拍数や血圧などの生理的なパラメーターに影響を与えることがあります。特定のリズムやメロディがリラックス反応を引き起こし、身体の緊張を緩和します。
  2. 感情的な共鳴: 音楽は人々の感情と密接に関連しています。特定の曲や旋律が感情と共鳴し、喜びや悲しみなどの感情を引き出すことができます。これにより、心理的なストレスや不安が軽減され、感情の解放や癒しをもたらします。ちなみに感情とは言語化されたもので、情動とは言語化できない快/不快、好悪といったものです。正確にいうと、感情=Feeling、情動=Emotionです。
  3. ドーパミン放出の促進: 音楽を聴くことで、脳内の快楽中枢であるドーパミン放出を促進することが知られています。このことから、音楽は喜びや幸福感をもたらし、リラックスや癒しをもたらす効果があります。
  4. 注意を引きつける効果: 音楽は注意を引きつけ、外部の刺激から心をリラックスさせる助けとなります。リズムやメロディに集中することで、日常のストレスや不安から離れることができます。これが脳のデフォルトモードネットワークの活性化に役に立つ理由です。音楽療法には調整的音楽療法(RMT)という療法があり、マインドフルネスとの関係性についての論文もおおくあります。

音楽療法はこれらを音楽療法士のプログラム設計のもと、受けるものです。漫然と好きな曲を聞いているのとはことなる効果があり、「意図的」にストレスケアの時間を持つことができます。

癒やしやリラックス、メタ認知が活性化されているときの脳波はどうなっているの?

音楽を聞いていて癒やされる、とかリラックスした。あるいはメタ認知が活性化されている、と聞いたことありませんか?こうしたとき脳波は、通常はアルファ波やセータ波が増加する傾向があります。脳波とは脳波とは、脳が活動する際に発生する波のような微弱な電気信号のことです。

  1. アルファ波: リラックスした状態や静かな集中状態において増加する波で、通常は8〜13 Hzの周波数を持ちます。アルファ波が増加することで、リラックスやリフレッシュされた状態になります。
  2. セータ波: 深いリラックスや瞑想の状態、または睡眠時に見られる波で、通常は4〜8 Hzの周波数を持ちます。セータ波が活性化することで、深い安定感や平穏な状態が生じ、心身のリフレッシュや癒しをもたらします。
  3. デルタ波: 睡眠時や深いリラックス状態において増加する波で、通常は0.5〜4 Hzの周波数を持ちます。デルタ波が活性化することで、睡眠中の休息やリフレッシュが促進されます。

音楽療法によって、これらの脳波パターンが増加し、心身がリラックスし、癒やされ、メタ認知が活性化されることがあります。

音楽がストレスホルモンにどう影響しているか

ストレスホルモンに対する音楽の影響に関する研究は、音楽療法や音楽の健康効果に関心が高まる中で増えています。以下はいくつかのエビデンスです。

  1. コルチゾール(ストレスホルモン)の減少: 数多くの研究が、音楽の聴取がストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を減少させることを示しています。例えば、研究によれば、リラックスした音楽を聴くことでコルチゾールのレベルが低下し、ストレスが軽減されることが報告されています。
  2. 自律神経のバランスの改善: 音楽のリラックス効果は、交感神経と副交感神経のバランスを調整し、ストレス反応を緩和することが示唆されています。特定の音楽のリズムやメロディは、心拍数や血圧などの自律神経の指標を安定させる効果があります。
  3. 心理的なストレスの軽減: 音楽の聴取は、心理的なストレスを軽減し、リラックス状態を促進することが証明されています。ストレスが軽減されると、ストレスホルモンの放出も自然と抑制される傾向があります。

これらのエビデンスは、音楽がストレスホルモンに直接的または間接的に影響を与え、リラックスや癒しを促進することを示唆しています。コルチゾールの測定は科学的に行われますので、当社は3〜4ヶ月に一度測定することをおすすめしたいです。

音楽療法がもたらすものと定量化

ストレスケアと音楽について長々と書いてきましたが、さいごに音楽療法がストレスケアに貢献する理由と、それを定量的に把握する方法をお伝えさせてください。何事も数字化することは大切ですよね。

  1. ストレスレベルの軽減: 音楽療法は、リラックス効果をもたらし、心身の緊張を緩和することでストレスレベルを低減します。定量的に把握するためには、ストレス尺度をアンケートで取得し、前後のストレスレベルの変化を評価します。また数ヶ月単位でストレスホルモン値を検査するのもオススメです。(個人情報になるので人事部が確認するためには本人の同意を得てください)
  2. 生理的なパラメーターの変化: 音楽療法は心拍数、血圧、呼吸率などの生理的なパラメーターを調整し、ストレス反応を軽減します。これらのパラメーターの変化を定量的に評価することで、ストレスレベルの低減を把握できます。健康経営をおこなっている企業であれば血圧計が備え付けられていることもあります。スマートウォッチ等でも測定可能です。
  3. 心理的なリラックス効果: 音楽療法はリラックス効果をもたらし、心理的なストレスを軽減します。定量的に評価するためには、心理的な尺度(例:不安尺度、うつ尺度)を使用して、前後の心理的な状態の変化を測定します。
  4. 心理的なウェルビーイングの向上: 音楽療法はポジティブな感情を促進し、心理的なウェルビーイングを向上させます。定量的に評価するためには、心理的なウェルビーイングの尺度(例:幸福感スケール、生活満足度スケール)を使用して、治療前後の心理的なウェルビーイングの変化を測定します。

これらの方法を組み合わせて、音楽療法がストレスケアにどのように貢献するかを定量的に評価することができます。数字に変化があれば同時にエンゲージメントが上昇し、離職率が低下しているはずです。

ストレスケアと音楽療法。の導入でウェルビーイングの向上を推進しませんか。

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