「音楽、この素敵な時間の貯蔵庫」は当社が運営するクラ音!!!の旧名称です。ひばり音楽教室(兵庫県宝塚市)の大西さんがぼくの大恩人で、彼が以前運営していたブログ名をすこし変えて使わさせてもらっていました。さて、この音楽。音楽が心身に大きな影響を与えることについて、わたし達は感覚的に知っていました。しかし科学、とくにMRIの登場以来、脳神経科学が急速に進歩し、科学(医学)的にその影響が解明されてきました。マインドフルネスをはじめ、音楽療法というとスピリチュアルなイメージ、「気の持ちよう」と思われるかもしれませんが、決してそうではないことが明らかになりつつあります。

音楽が心身にあたえる影響を5つ

1. ストレス軽減

音楽は心の状態に大きな影響を与えます。心とは脳が生み出す現象のことです。リラックスした音楽は副交感神経を活性化し、心拍数や血圧を下げます。これによりストレスホルモンの分泌が抑制され、リラックス状態が促進されます。

2. 集中力向上

集中力を高めるときに、音楽は有効です。特にバックグラウンドミュージックとして、音楽は脳の活動を刺激し、注意力を向上させます。リズミカルな音楽は特に作業効率を高めます。お仕事中に音楽があるほうがいい派と、ないほうがいい派が存在します。当社は音楽がある派です。なおクラシック音楽以外の楽曲もかかっています。

3. 気分の安定

音楽は脳内のドーパミンやセロトニンの放出を促進し、気分を安定させます。好きな音楽を聴くことで、幸福感や満足感が高まるのはこのためです。

4. 運動パフォーマンスの向上

運動中に音楽を聴くと、心拍数や呼吸がリズムに合わせて調整されます。このため、運動のパフォーマンスが向上し、疲労感が軽減されます。

5. 記憶力と学習

音楽は脳の神経回路を活性化し、記憶力や学習能力を向上させます。特に音楽と共に学習することで、情報の定着が促進され、効果的な学習が可能になります。

なぜ記憶力の向上につながるのか?

企業において重要視するのは、おそらく「記憶力と学習」そして「ストレス軽減」ではないでしょうか。そうすると音楽を聴く、流しておくことがなぜ記憶力の向上につながるか?と不思議に思いますよね。

このブログではまず「記憶」がなにかをお伝えします。記憶が脳に定着するメカニズムを知ると、音楽との関係がわかってきて、興味深く、楽しいです。

まず記憶とは情報が脳内の神経回路に長期的に保存されるプロセスです。情報が定着するためには、短期記憶から長期記憶への変換が重要です。このプロセスでシナプスの強化や新しいシナプスの形成が起こります。

また記憶が定着する際には、脳内の神経伝達物質やタンパク質の合成が活発化し、特定の神経回路が安定化されます。さらに情報を繰り返し学習することや(反復)、情報が感情的に関連づけられることが定着を助けます。

時間とともに、定着された記憶は長期記憶として脳に保存され、呼び起こされる際には同じ神経回路が再度活性化されます。長期記憶は大脳新皮質に、短期記憶は海馬に定着されていると言われています。

記憶力の向上と音楽の関連

本題の音楽が記憶に影響を与える主な理由です。まず音楽は脳のさまざまな領域を活性化させます。特に聴覚野や運動野、感情処理に関わる部位などが活性化され、脳全体のネットワークが活発化します。このような脳の活性化によって、情報の処理や記憶の形成が助けられます。

また、音楽には感情との強い結びつきがあります。聴いた音楽が脳内で感情を呼び起こすことで、その記憶も強化されます。脳内のドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質の放出も音楽によって促進され、このプロセスが記憶の定着に寄与しています。

さらに、音楽はリズムやメロディによって脳の活動を整えます。特にリズミカルな音楽は脳波パターンを調整し、注意や集中力を高める効果があります。これによって、情報の取り込みや記憶の定着がスムーズにおこなわれています。

最後に、音楽は記憶との関連性を強調する「エンコーディング特性」を持っています。音楽と一緒に学習した情報は、後で同じ音楽を聴くことで連想が生じ、記憶が引き出しやすくなります。

以上のように、音楽は脳の複数の領域や機能を刺激し、記憶力の向上につながる脳科学的なメカニズムが働いているのです。

記憶は脳のどこにあるの?

あれ?記憶ってそもそもどこにあるの?と思いませんか。記憶は脳の特定の場所に局在するのではなくて、脳全体のネットワークに分散しています。まるでブロックチェーン技術のようですね。特定の種類の記憶や情報は、脳の異なる領域で処理され、保持されてます。

海馬や大脳皮質の一部は、新しい情報を長期記憶に変換する役割を果たします。視床下部は記憶の睡眠時の処理に関与し、扁桃体は情動的な記憶の形成に重要です。記憶は神経細胞間の結合やシナプスの強化によって形成され、脳の複数の領域が連携して記憶の維持と呼び起こしを支えています。

  1. 海馬: 海馬は記憶の形成に重要な役割を果たします。特に新しい情報を短期記憶から長期記憶へ変換する際に重要な役割を果たします。
  2. 大脳皮質: 大脳皮質は複数の葉状の領域で構成されており、情報処理や高次の認知機能を担当しています。大脳皮質の一部は長期記憶の保持と関連しています。
  3. 扁桃体: 扁桃体は情動や記憶の形成に関与しており、特に情動的な体験や出来事が記憶に影響を与える場合に重要な役割を果たします。
  4. 視床下部: 視床下部は脳の下部に位置し、記憶との関連が研究されています。特に記憶の睡眠時の処理や制御に関与しています。
  5. 基底核: 基底核は運動や学習に関連していますが、最近の研究では記憶との関連性も指摘されています。

繰り返しになりますが、記憶は上記のような脳の領域や神経回路の相互作用によって形成され、脳内の情報処理ネットワーク全体で保持・保管されています。特定の記憶が形成される際には、複数の脳の領域が協調して活動し、情報が統合され、関連づけられます。「エンコーディング特性」にとって、そのときの光景が脳に浮かび上がります。音楽にかぎらず香り、温度、服装、会話などあらゆるものがトリガーになります。そして脳にうかぶ映像は人によってちがいます。