決算真っ最中なんですが、1人企業からいよいよ組織化に向けて、いろんなことを進めたり、思考を深めています。
そのひとつが資金調達で、事業計画書やピッチ資料をつくりはじめました。

それらをもとに打ち合わせをすると、いろんな角度から質問が飛んできます。

  • 「その数字の前提は?」
  • 「本当にその順番で伸びますか?」
  • 「強み、差別化はなんですか?」

ぼくはこれを、自分にとっての「複眼」を一気に手にできる、またとない機会だと思っています。

一つひとつの質問に答えながら、

  • 思考が浅かったところ
  • 見えていなかった角度
  • 「なんとなく」で乗り切ろうとしていた前提

みたいなものが、容赦なく炙り出されていく瞬間が何度もくる。

脳内ではスローモーションみたいに、

  • なにができていないのか
  • それはなぜか
  • どうすれば実現できるのか
  • なぜ自分たちなら実行できると言えるのか

──これを 24時間ずっと自問自答しつづける電気信号が流れて、同時発火している感覚に襲われる。

そんな時間が続くと、ときどき脳がオーバーヒートする。
今週も恒例の扁桃腺炎で寝込んでいたのだけど、寝てるあいだに見ていた夢を、やたらと鮮明におぼえている。

夢のなかでぼくは、メール画面やSlackのタイムラインを開いたり閉じたりしながら、「できない理由」をきれいに、誰かに説明している。

「ここがボトルネックで、ここがリスクで……」
「ここをこうすれば、出来るようになっていくはずで……」

そんな類のことを論理的に話しているくせに、どこかで自分を冷めた目で見ている自分もいて、目が覚めたときに、ちょっと笑ってしまった。
メタ認知力が高いって、こういう状態のことをいうのかもしれない。

でもきっと、潜在意識レベルで「まだ足りてない」ってことを理解しているのだと思う。
現実と理想のギャップなんて、誰でも抱えているものだけど、「現実的な理想論」をきちんと説明できるのは悪くない。というか、経営陣のしごとはまさにそこで、説明と環境の実現にある。

補完関係とは

ぼくができないことは、杉ちゃんができる。
杉ちゃんが苦手なところは、ぼくができる。

これを補完関係と呼ぶなら、たしかにそうなんだろう。
二人でよく行く飲食店のオーナーにも、

「ほんと、珍しいコンビですよね」

と言われて、うらやましがられたことがあるくらいなので、外から見てもそう映っているのだと思う。

資金調達や事業開発の話をしていると、ぼくが言葉を探しているあいだに、杉ちゃんがスパッと構造を言語化してくれることがある。

逆に、杉ちゃんが「なんかこれ、感覚的におもしろいんだけど」と言ったとき、
「今日の商談でこんな話の展開になってさ」と話し始めたとき、
その感覚を言葉やストーリーに、企画書のかたちに落とすのは、ぼくの役目だったりする。

前からぼくは、

人にはそれぞれ強みがあって、ストレス反応によって強み⇔弱みが入れ替わる

と考えているタイプで、弱みは克服するよりも補い合い、強みを伸ばしたほうがいいと思っている。
そもそも過剰なストレスがたまると、心身に影響が出る。

だからこそ、ぼくは 心=脳のはたらき だと考えて、脳の反応が肉体にでると考えている「心脳一元論」派なので、こういう考えかたをする。

資金調達の「あと」は妥協できない

これから進めていく資金調達では、「そのあと」を妥協しないと決めている。

お金が入った瞬間、会社は一気に変わる。
採用が始まり、人が増え、プロジェクトが同時多発的に走り出す。

だからこそ、

  • どんな人と働きたいのか
  • どんなカルチャーを守りたいのか
  • 何を優先し、何をやらないのか

ここを曖昧にしたまま資金だけ入れてしまうのは、将来の自分たちに爆弾を渡すようなものだと思っている。誰でもいいってわけじゃない。企業文化、いまはまだ暗黙知に近いけど、フィットしない限り、どんな強みも発揮できないのをこれまで何千人と見てきた。

ぼくは、経営は 「組織開発」と「マーケティング」が両輪で、先端をセールスが担っている と考えている。

  • 組織開発:どんな「脳」とどんな感情を持った人たちが集まる場にするか
  • マーケティング:どんなストーリーで世界とつながりにいくか
  • セールス:その最前線で、誰にどんな価値を具体的に届けるのか

この三つがうまく噛み合ったとき、やっと事業は「走り続けられる」かたちになる。とくにスタートアップ/ベンチャー企業は「結果がすべて」なので、ここを外すと痛い目にあう。

どこで頑張るかを決める

事業の進めかたとして、ぼくらが意識しているのはすごくシンプルで、

  • すでに伸びている市場に
  • 自分たちにとっていいタイミングで参入し
  • 自社の強みを活かしたマーケティングを行い
  • 便利で、楽しくて、役に立つサービスをつくり
  • 熱量の高いチームで
  • きっちり計算したうえで、二兎も三兎も追いにいく

というスタンスに近い。

「がむしゃらに頑張る」だけじゃなくて、どこで/何に対して/どの順番で頑張るか を、繰り返し調整している感覚に近い。

複眼思考は、ひとりでは手に入らない

資金調達や事業開発の打ち合わせでは、投資家や株主、パートナー仲間たちから、いろんな角度の質問が飛んでくる。

数字の筋を問われることもあれば、マーケットのリアリティを突かれることもあるし、「そもそも、あなたたちは何を一番やりたいの?」という、どストレートな問いが飛んでくることもある。

しんどいといえばしんどいし、楽しいといえば楽しい。でも、そのたびに自分の「地図」が書き換わっていく感覚がある。

  • 見えていなかったリスク
  • 口にしていなかった本音
  • 「わかっているつもり」だった前提の薄さ

こういうものを、一つずつ確認していく作業は、ときどき痛いし、脳もオーバーヒートする。
それでも、確実に「複眼」を育ててくれる。

ひとりで考えているだけでは、どうしても単眼になってしまう。だからこそ、資金調達のプロセスそのものが、ぼくにとっては思考のトレーニングでもある。

こういうことを言うから、起業家は変態扱いされるんだろうなと思いつつ。

それでもノートPCを開いてしまう夜

19時過ぎに自宅に戻って、小休憩してから、またノートパソコンを開く。
週110時間には及ばないけれど、85時間くらい働いている起業家って、案外多いんじゃないだろうか。

じっとしているほうが不安になる。
回遊魚みたいに動き回って、人と話して、手応えを確かめていたいタイプなのだと思う。

企画へのフィードバック、
「それ欲しかったんです」という声、
「一緒にやりませんか?」という誘い。

そういう一つひとつが、オーバーヒートした脳みそを、もう一回前に押し出してくれる。
生きていることを、脳の奥底から痛感する。
こうして、ぼくの脳の地図が日々更新されていく。

それでも前に進みたいから

ぼくたちルミアデス・ソリューションは、NFTやRWAという新しい領域で、何度も自分に問い直しながら、それでも前に進もうとしている。

脳がオーバーヒートしても、扁桃腺が腫れても、夢のなかでSlackを開いていても。
それでもやっぱり、

「自分たちなら実行できる」

と言えるところまで、思考と行動を積み上げていきたい。